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一度、壊れてしまった歯車は、もう二度と回り始めない事を僕は知っていた。
昔は、そんな事微塵も知らなかったのに。
今は、知っている。
それは、とても悲しい事だけれど。
仕方ない、と肩をすくめてみるしかない。
世界とは、そういうものなのだ。
あの日の、僕と彼女のいた世界と。
今、僕が存在する世界は。
同じだけれど、まるっきし違うのだから。
車から排出される排気ガスのように、今日も世界は、汚いものや悪いものや、僕達が知りたくなかったたくさんのものを、何食わぬ顔をし、生み出していく。
僕はそれを止める事も出来ずに、ただただ嘆くしかない。
「そっか」
「うん」
「そっかそっか」
隣にいる彼女は、笑っていたけれど。
笑っていたけれど、それは僕の好きなあの可愛らしい笑みではなく、どこか痛々しい。
悲しそう、というより、寂しそう、というより。
からっぽ。
からっぽの笑みだ。
でも、からっぽなのは僕の心の方だ。
彼女には僕以外に友達がいる。
僕にも、彼女以外に友達がいる。
それでも。
僕達にとって、『幼馴染』という存在は、お互いだけだった。
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