0.二人

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がむしゃらに仕事をしてきた俺は、子供達の間で流行っているものも何一つ知らず。 彼女がくれた最後のチャンスにすらも気づかずに、ベンチで缶コーヒーを飲むしか出来ない。 あの日、馬鹿みたいに前ばかりを見ていた俺は。 大きくなったら、僕はきっと立派な人になる。 駄目な大人には、絶対にならない。 そう、勝手に決め付けてしまっていたけど。 今、俺は、あの日の自分の夢すら叶えられず、こうして駄目な大人へとなってしまっている。 妙に甘くて、苦いコーヒーを口に含む事だけが幸福だと感じる、どうしようもなく、駄目な大人に。 「君達は、」 そこまで考えたら、口は勝手に動いていた。 まだ、幼いこの子達。 あの日、前を見ていた俺と同じように、ただ光だけを信じている子供達。 じゃあ、君達が、君達のまま大人になれるように。 俺のような、駄目な大人にはならないように。 「君達は、お互いが好きかい?」 一瞬だけ驚いたように、首を傾げたけれど。 すぐに、満面の笑みを浮かべ、縦に頷いたこの子達の歩く道に。 どうか、溢れんばかりの幸福がある事を。 どうか。 今の俺は、まだ弱くて。 言葉に出して、この事を伝える事は出来ないけれど。 笑いながら、楽しそうに、手を繋ぎ。 公園を後にしていく、小さな二つの後姿に、こっそりと手を振り、心の中で呟く。 どうか、お幸せに。
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