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辿り着いた先。
はぁ、はぁ、と肩で息をする僕。
揺れるブランコ。
昔、彼女とよく遊んだ公園。
揺れるブランコ。
揺れる、彼女。
言いたい事や、話したい事があるなら。
会いに行けば良い。
そのために、この二本の足は、存在するのだから。
だから、僕は。
そっと、彼女の前へと歩いていく。
あの日、少しずつ遠くなってしまった距離が。
驚くくらい、簡単に、縮まっていくのに。
泣きそうになりながらも、ゆっくりと、少しずつ、距離をつめて。
キィ、と鈍い音をたてて、彼女の乗っていたブランコが揺れるのをやめる。
こちらを見上げてくる彼女。
彼女の前で、立ち止まる僕。
彼女は笑った。
僕達が、幼馴染になるための最初の出会いの時に、浮かべた笑みと同じように。
可愛くて、そして優しい笑み。
そんな彼女に笑い返しながら、僕はゆっくりと口を開く。
零れ落ちる言葉は、僕がずっと言えなかった、
あの、二文字。
「 」
end
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