紫煙ハ未ダニ九揺ラセル

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伊達は涼子を見る。 涼子はその眼差しを 逸らす事なく しっかりと見つめたまま 話し始めた。 「まずは… 伊達君 君には『ありがとう』って 言いたかった」 隣で涼子を見張る 刑務官を少し 見てから続ける。 「もし… 伊達君があの時 私を捕まえてくれなきゃ 私は一生…後悔したまま 死んだ人生を生きていたわ」 伊達は黙ったまま 涼子を見つめる。 「本当に… どうしようもない程に 堕ちていく私を 止めてくれたのは 伊達君だったの」 伊達にいつの間にか 再び涙が浮かんでいた。 ずっと頭にあった後悔が 今…薄れていくのを感じた。 涼子は続ける。 「あなたは 私を救ってくれたわ」 涼子の声だけが響く面会室は 日差しがとても暖かく感じた。
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