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伊達の声に
涼子は背を向けたまま
立ち止まった。
伊達の声は震えていた。
「僕は…
あなたの事が…」
そこまで言って
言葉が詰まった。
言っていいのか
分からなかった。
涼子はゆっくり振り向いて
笑顔で伊達に言う。
「…その先は言わないで」
伊達と涼子の視線が合う。
涼子の言葉。
その意味を察して
伊達がその次の言葉を
飲み込んだ時
涼子は呟いた。
「…私と
気持ち一緒だったのかな」
その瞳に
再び涙が浮かぶ。
涼子は首を振って
いつもの表情を
取り戻した。
「私の色が…
太陽みたいな
綺麗な紅に戻ったら
また逢ってね」
白い歯を覗かせて
笑って見せた。
そして彼女は
刑務官と共に
面会室を後にした。
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