五言目『神気発生』

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「目が…紅くなった…」  それを聞いて俺は初めて知った。俺の両目は前にウズメが言っていたような、綺麗に澄んだ蒼い瞳ではなく、燃え滾る灼熱の業火の如く、紅く染まっている事を。  気のせいか、俺を取り巻く雷光も、気性が荒くなったかのように感じる。少しでも気を抜いたら、荒れ狂う雷を制御しきれなくなりそうだ。  しかし、その余波はすでに周りに漏れ始めていた。周りを囲むコンクリートの壁に穴を穿ち、フェンスを溶解し、地面を跳ね回り、いつ、誰に当たってもおかしくない状況だった。 「くそっ!なんだよこれは!話に聞いてねぇぞ!おい、撤収だ!ずらかるぞ!」  そう言うやいなや、野郎どもは一目散にこの場から逃げ出した。それぞれの所持物、バイクやアクセサリー、とりあえず金属類を慌てて取り除き、脱兎の如く、次々にこの場を後にしていった。ただ一人、腰を抜かした榊原を除いては…  その瞬間、俺の紫電は動けない獲物に狙いを定めた。周りに散らばる貴金属、避雷針になりえる鉄の固まりのバイクにも目をくれず、ただの一人に向かっていった。  それは、先ほどの俺の先立った感情を代弁するかのように、荒れ狂いながらも迷いなく、榊原という人物、その一点を目指して突き進んだ。 「せ、先輩!」  気がつけば、川波先輩は榊原を守るように、俺と榊原の間に素早く割って入っていた。 「やめてー!」  しかし、無情にもその言葉で雷が止まることは無かった。むしろ勢いを増し、すでに彼女達の目の前にまで迫っていた。  くそ、どうしたらいいんだ!  このままじゃ先輩が。  止めろ、止めろ………
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