ある夏の日

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生まれついての愚者ぶりで、誰もが目と鼻を覆いたくなる部屋に僕はいた。 学校課題が間に合わず、それでもなお、図太くタバコをふかしていた。 何か、おもしろいことはないかーー。 常日頃からそう考え、この時もまた同じだった。そんなとき……。 『ん?』 もとより静かな時間帯だが、さらに耳を澄ますと、どこかでカサカサ…という音。 放り投げたままのプリントが、風で揺れているのだろうか? しかし、風はそれほど強くない……いや、むしろ吹いてなどいない。 では、何故? じっと動かず、僕は音の正体を見破ろうと意識を集中させた。 その心はまさに明鏡止水、謎の音と自らの呼吸だけが響いた。
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