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「どうだった?」
裕子が神妙な表情で、そして、興味津々といった心もちを隠し切れてない表情で私に話しかけた。
「なんか不愉快だった」
私は機嫌が悪いのを取りつくろいもせず、言った。
「しっかし、おばさんの恋人かー。昔と違う男なんでしょ?おばさんすごいわねぇ」
裕子は紅茶に砂糖を入れながら、すごいすごいと呟いている。
「みっともないよ。もういい歳なのに」
私はコーヒーをふーふー冷ましながら言う。
「で、どんな男だったの?」
裕子はもう興味津々とした表情を隠そうともしていない。
連絡をよこしてきた男は、母の現在の恋人だと言う。
母は10年前に私を捨てた。
母の恋人と名乗る男が、みっともない中年の、太って脂ぎった、ハゲ親父だったら少しはマシだった。
だけど……
「若くて、ちょっとイイ男だった」
本当は、ちょっとどころじゃくイイ男だった。
私より少し年上に見えたけど、まだ30歳にはなってないであろう若い男で。
柔らかそうな黒髪は全体的に少し長い。
それが妙に色っぽさを出していて、艶っぽい。
ほっそりとした長身で清潔そうなパリっとしたシャツをさらりと着こなしていた。
きれい過ぎて胡散臭い男、それが第一印象だった。
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