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怪獣の夢を見た。
私は誰もいない教室で一人折り紙を折っている。
鶴しか折れない芸のない私はひたすら色とりどりの鶴を折る。
そこに怪獣がやってきてむしゃむしゃと鶴を食べるんだ。
私の折った鶴がどんどん消えていくよ。
なのに私は何も言えない。
鶴を折ることしかできない。
ひたすら折った。
怪獣がカサカサと鶴を噛み締める音が静かに響く。
泣いちゃいたいような気分。
怪獣が敦賀の声でいった。
「嫌なら嫌っていえよ」
そこで目が覚めた。
日差しが少し暑い。
腕時計を見ると10分しかたってなかった。
教室の中に入る。
しん、とした誰もいない教室。
となりの教室からかすかに教科書を読む先生の声が聞こえる。
私は誰にも見られていないというのにこっそりと敦賀の席を見た。
なんて小心者な私。
敦賀とは夏休みに入る前はとなりの席だった。
二学期になってから席替えで離れてしまった。
消しゴムをかなりの頻度で忘れたりなくしたりする敦賀は、となりに座る私の消しゴムをまるで自分のもんみたいに使った。
「ワリィ」
そういいながら、私よりはるかにデカい手でひょいっと消しゴムをつまんだ。
敦賀の手は指が長くて、爪が少し伸びてた。
きれいだと思った。
授業中ひたすらノートをとる私、時々となりから伸びてくる手にどきっとした。
私は自覚したくなかったけど、明らかに敦賀を意識していた。
だって私はあんな手を他に知らない。
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