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「実は私は鬼なのだ、角が無く、肌も人とそっくりで禁忌の子として鬼ヶ島に生まれた。
鬼達は私を鬼と認めず、大きな桃に閉じ込め人も住まぬ山奥に捨てられた。
たまたま、川で洗濯をしていた老夫婦に見つけられ育ててもらったおかげで生き伸びたが、むしろ見つからないほうがよかったのかもしれない。
私は外へ出たとき、鬼達への復讐を誓った、そして、鬼ヶ島へ復讐に行った。
私は私を疎外したもの達に復讐をした。
平和に暮らしていた鬼達を私は私情によって殺したのだ。」
太一朗は話し終えると、うつむき、涙で顔を濡らしていた。
月姫は、悲しくただ悲しくつうむいた。
「わかりました。悲しいことを思い出させてしまいましたね。
…私は明日、旅立ちます。」
その夜、月姫は迷った、愛した男は復讐の相手『桃太郎』だとわかり悲しく。
月姫は苦渋のすえ、太一朗に復讐をすることを決意した。
月姫は肌身離さず持っていた小刀を持ち太一朗のもとへ向った。
太一朗の枕元へ行き刃を向ける。
しかし、寝ているはずの太一朗が目を閉じたまま話始めた。
「月姫、今まで嘘をついていてすまなかった。」
月姫は驚きました。
「知っていたのですか…」
「ああ、始めに出会ったときに術が解け鬼の姿だった。その時にだいたいわかっていた。」
月姫は涙を流していた。
「なぜ、わかっていたのに助けたのですか、なぜ殺さなかったのですか、なぜ…」
「私を最後まで助けようとして殺された母に似ていた。
そして、何より、そなたの美しさに惚れていたから。」
「…私もあなた様が好きでした。
しかし、家族、仲間の仇…」
月姫は目から涙があふれていく。
「もう話すな…」
太一朗が涙を目に浮かべ言った。
「あなた様を愛していました。」
月姫は涙を浮かべ言った。
「私もそなたを愛していた。」
太一朗も目に涙を浮かべ言った。
月を照らしながら白銀に光る刃は赤く染まり、月姫の嗚咽がただ静寂な夜に響く。
赤く染まった刃は、更なる赤へと移っていった。
静寂な夜となる赤へと。
ただ、月だけがその結末をしる。
END
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