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講義も終わり、詩織は鞄に教科書を直すと「よしっ」っと言って立ち上がる。
「ちょっと行ってくるよ」
「うん。頑張ってね」
亮平を探して校内を歩いている詩織に後ろから声がかけられる。
「おい結城」
詩織が振り返ると、そこにいたのは光画部の部長であった。詩織が「おはようございます」と挨拶をすると「おう」っと簡単な挨拶を済ませて、部長が詩織に話しかける。
「どうだ?撮りたい相手は見つかったか?」
野太い声で話す部長に詩織は首を振る。そんな様子の詩織に部長は「そうか」と少し考えるようにすると、詩織に向かって話す。
「まぁそう難しく考えるなよ。考えてどうにかなるものじゃないしな…感じるものがあればなんでも撮ってみたらいい」
「はい…」
「まだ時間はある。ゆっくりでいいんだからな」
そんな話をしばらくして部室に向かって歩き出す部長を見ながら詩織が少し足を止めて考える。
(感じるものがあれば…か……私、もしかしたら撮りたいの…かな?)
亮平に対して何か気になった瞬間。しかし、それは恋愛感情等ではなくわけがわからなかった気持ちの靄…それは初めて人に対して感じた「撮りたい」というものなのではないか?そんな考えが詩織に浮かぶ。
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