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特に当てのあるわけではなく詩織は校内を歩いていた。亮平に会えればラッキー。会えなくても自分の中で考えをまとめる時間が出来る。そんな感じで歩いていると、やや眠たそうに校門から入ってくる亮平の姿が目にとまる。
「あ…」
急なことに少し驚く詩織に気がつくと、亮平は片手を上げて「おはよう」と挨拶をする。
「おはよう。ちょっと…いいかな?」
挨拶を返して亮平に話し掛けると、亮平はすぐに眠たそうなそぶりを消して笑顔で詩織に対応する。
「どうしたの?」
二人で歩きながら詩織が単刀直入に切り出す。
なんとなく気になること。
それが恋愛感情なのかはわからないこと。
自分が亮平を「撮りたい」のかも知れないということ。
それを聞いた亮平は思わず噴き出すと、お腹を押さえて笑い出す。
「ははははは」
ひとしきり笑い、それが少しおさまった頃、亮平がまだ微かに笑いを堪えるようにして詩織に話す。
「君、面白いね。まさかそんなにストレートにくるなんて…」
「笑わせるつもりはなかったんだけどね」
「いや、ごめん。あまりにストレートだったから、つい…さ」
とりあえず亮平は笑いを抑えて少し真面目な表情を浮かべる。
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