被写体

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「外いこっと…」 部屋の中にいても誰とも出会わないと思い詩織は部屋から外に出る。元々、旅行好きの詩織は歩くことを苦だとは思わずに、気がつけば半日歩いている。そういうこともよくあった。 今日も特に目的があるわけではないが、足の向くまま気の向くままに歩いていると大学から少し離れた場所にある野球部の専用グラウンドの近くを通り掛かる。 (少し見ていこうかな?) 自然とそんな気持ちになりグラウンドに近寄って行くと… 「レフトバ~ックッ!」 「返球早くっ!」 「気を抜くなっ!」 グラウンド上で激しく声を出している男性が目にうつる。 (あれは確か…) その姿に詩織は見覚えがあった。 彼の名は畑中 潤(はたなか じゅん)星華大学野球部のキャプテンであり、同時にエースでもある。 詩織より1学年上の4回生であり、野球部内では練習に一切手を抜かない厳しさから後輩から怖がられる存在であるが、野球部から出ると人付合いもよく、大学内での行事にも積極的に参加していて去年の学園祭の準備では写真部の会場設営を手伝いに来ていたので二人は面識があった。
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