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「あっいたっ!詩織~」
詩織がグラウンドを離れて街中を歩いていると、少し離れた場所から詩織の名前を呼ぶ声が聞こえる。
「?」
詩織がなにごとかと振り返ると、こっちに向かって手を振りながら走ってくる女性と目が合う。
「瑠璃?」
「はぁはぁはぁ…追い付いた~」
瑠璃と呼ばれた女性は肩を揺らしながらも、なんとか息を整えて詩織に話し始める。
「ねっ今週の土曜日暇かな?」
「え?特に予定は無いけど…」
詩織がそう答えると、瑠璃は少し大袈裟に顔の前で両手を合わせて詩織を拝むようにして話す。
「お願いっ!合コンするんだけど一人どうしても無理になっちゃって…出てくれないかな?お願いっ!」
「ん~それくらい別にいいけど…」
「やたっ!」
詩織の言葉の途中で瑠璃はガッツポーズを決める。
「でも…それって電話でもよくなかった?わざわざ走らなくても…」
もっともな詩織の言葉に瑠璃は頭をかきながら話す。
「いやぁ、つい見かけたから」
舌を出しながら瑠璃が笑うのを見ていると詩織もおかしくなって二人で笑い合う。
「でも、ありがとっ!また明日学校でねっ」
「いいよ。私も遊びたかったしね」
しばらく他愛ない会話をかわした後、二人が別れる頃には既に空が赤く染まり始めていた。
「ん~やっぱ簡単には見つからないなぁ~。そろそろ遅いし帰ろっかな」
軽く一つ伸びをして今日は諦めようと決めて家に帰る。
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