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あたしの指の先を辿ると、
いつも通り紙幣が2、3枚無造作に置かれていた。
そう、「いつも通り」。
母親は3日に一度、この家にお金を置いていく。
そしてまた、フラフラと何処か知らない男の元へ消えていくのだ。
あたしは、望まれて生まれてきたわけでは無いらしい。
現に、母親があたしを見る目はどこまでも忌まわしい物を見る目付きだし、第一この家にお金を置いていく時間をわざわざあたしが家を空けている時間にしているのが、事実だと物語っている。
幼い頃は、寂しがったりもした。
時には、独りの夜に涙したこともあった。
独り膝を抱え、明けぬ夜を恨めしく思い、母の愛情を求めた日々。
今となってはもう、遠い記憶だ。
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