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「――――っ!」
トカゲが声にならない絶叫を上げ、暴れ始めた。
「うわっ、トカゲが暴れ出したっ!」
「キャー、こっち来ないでー!!」
「誰か止めろ!」
教室内は、てんやわんやの大騒ぎ。
逃げ惑う女子たち。暴走するトカゲを抑えようとする男子たち。
そんな騒ぎを聞き流しながら、俺は隣に立つ亮を見上げる。投げやりに俺は問いかけた。
「亮、楽しいか?」
声に元気がないのが、自覚出来る。
対照的に返ってくる声は、非常にご機嫌だった。
「もちろん」
亮は、それはそれは楽しそうな笑みを浮かべて言い切った。
その表情を見ていると、気分が沈んでくるので、俺は視線を逸らす。すると、未だ暴走するトカゲの姿が視界に入った。
「やっぱり、止めるのは俺か?」
「当たり前だろ?」
独り言のつもりだったのだが、亮に返事を返された。
「何で当たり前なんだよ?」
そもそも、こいつの一言でトカゲは暴走し出したはずだ。
それは亮も自覚しているはずだが、おくびにも出さず、ケロッとした顔で別のことを言う。
「トカゲが怒り狂ってる原因が、陽平の河瀬和泉への告白だからだ」
「なっ、違うだろ!? そもそもあれは――」
トカゲが和泉のことで俺にキレる権利はない。
なぜなら和泉に告白しろ、と俺に言ったのは、他ならぬトカゲ自身だからだ。
俺は和泉に告白する原因になった出来事を思い出す。
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