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「お前の言いたいことはわかるけどな」
亮が尚も暴れているトカゲに視線を向ける。
「確かに、罰ゲームの内容を考えたのも奴だし、ハメ技でお前の車をクラッシュさせたのも奴だ」
その通りだ。さらにその後も、トカゲは精力的に活動した。
告白の舞台の南側校舎の屋上を貸し切った ――方法は知らない―― のもトカゲだ。
まさに、自業自得というやつだ。
「トカゲだって、頭では理解してるさ。だけど、納得出来るかどうかは別だろ?」
そうかもしれない。いや、亮の言う通りだろう。
トカゲの頭の中で、現在の状況は間違いなく想定外のはずだ。
俺にとっても想定外だ。
俺だって和泉と付き合える可能性は、0%だと思っていた。俺でなく、亮でも無理だろうと思っていた。
だけど、現実に和泉と付き合っている。
いやはや、この世というものは何が起こるかわからないものだ。
などと俺が思索に耽っているうちに、教室の騒ぎはヒートアップしていた。
毎回の恒例で、クラス委員の少女が俺に近寄って来る。
「ごめんなさい、松永くん。またお願い出来る?」
表情や声に疲労の色が見える。
少し罪悪感を覚えた。
次からは、もっと早くトカゲを止めよう。
そんなことを思いながら、俺はトカゲの背後に回った。正確に狙い場所を定める。
トカゲの怒る理由を理解しても、それを受け入れる義務はないはずだ。
「寝ろ」
俺はトカゲの首の裏に容赦なく手刀を叩き込む。糸の切れた人形のように、トカゲはその場に崩れ落ちた。
そして、一限目が始まり
「こらっ、坂下! 教室の床で寝るな!」
トカゲの成績が少し下がった。
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