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午前の授業が終わり、昼休み。
「食堂行こうぜ」
俺は席から立ち上がり、いつも通り亮に声をかけた。
教科書を机に仕舞いながら亮は答えを返す。
「ああ、いいぜ」
亮が立ち上がったのを確認し、俺はいつもの食堂メンバーのもう一人の姿を探す。
普段は真っ先に寄って来るのだが。
「あれ? トカゲは?」
「…………」
亮が無言で指差した先に目を向けると、机に突っ伏したまま動かない、トカゲの姿があった。
「頭がぐらぐらして、気分が悪いそうだ」
「そうか、なら仕方ないな」
それを最後に、トカゲのことは俺と亮の意識内から消え失せた。
亮と連れ立って教室のドアを目指す。
目の前まで来たところで、急に勢い良く開け放たれた。
そして、そこにいたのは――
「……い、和泉?」
その手には、可愛らしい絵柄の布で包まれた箱が、二個握られている。
俺はすぐにそれが何かを悟った。そして、和泉が何を言いたいのかも。
トカゲがよくやっているギャルゲーの主人公ほど、俺は鈍い訳ではない。
正直に言うと、かなり嬉しいが、今ここでそれを言われると、俺の命が危ない。
クラス中の男子の視線が、俺の背中に突き刺さっているのが感じ取れる。
「あのさ、和泉――」
和泉の口をふさぐため俺は口を開いたが、一足遅かった。
「お弁当作って来たの。一緒に食べよ」
そう言って和泉は、手の中の小包を俺に掲げて見せ、誰もを虜にするような微笑みを向けて来た。
全身から大量の冷や汗が流れ始める。
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