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「一目惚れだったのかな? だから、もう一回会いたくて、必死になって陽平くんのことを捜したの」
その日々は充実していたのだろう。和泉の口元に笑みが浮かんでいた。
「見つけるのは簡単だったよ。陽平くん、有名人だったから」
彼女は目を開け、イタズラっぽい視線を俺に向けて来る。
「……ほっとけ」
ふんっ、と俺は鼻を鳴らした。
俺の人生 ――たった十七年だが―― で最大の汚点である中学時代。自業自得とは言え、そのことを持ち出されるのは、やはり良い気分はしない。
そんな子供みたいに拗ねている俺の様子に、和泉はクスッと可愛らしく笑った。
そして、視線を前に戻す。
「陽平くんを見つけた後、告白とかしようと思ったんだけどね……怖くて出来なかった」
彼女の言葉で、表情で、俺の胸の痛みが増した。
「そのまま中学校も卒業。高校に入学して陽平くんの名前を見つけた時は驚いたけど、本当に嬉しかったの」
今までの話から、和泉がどれほど喜んだかは容易に想像がついた。それこそ飛ぶように喜んだのだろう。
「それからずっと陽平くんを見て来た。告白された時は、その場で泣きたいくらい嬉しかった。陽平くんは、私のこと好きじゃないと思ってたから」
ぐあっ!
彼女の最後の言葉が、俺の胸をえぐった。
この日最大の痛みが俺の良心を襲う。
このままじゃいけない! 彼女の真剣な思いには、こちらもきちんと応えなければならない!
そう俺の良心が叫ぶ。
弁解のしようもなく、嫌われ軽蔑されるだろう。
だが、自業自得だ。当然の報いなのだ。
俺は意を決して口を開いた。
「和泉、俺は――」
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