Childhood friend

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 服を着た俺は、絨毯の引かれた床に座り込んで、温かいココアを飲んでいた。  その俺の正面に先程の少女が、俺と同じように床に座り、まだ若干赤い顔のままココアを飲んでいる。  彼女の名前は、沢木美沙(さわきみさ)。  隣りの家に住んでおり、昔から家族ぐるみの付き合いをしている。いわゆる幼なじみというやつだ。  通学している学校も同じで、さらに学年も一緒。ただ、クラスは違う。  身長は160㎝ちょい。  キリッとつり上がった眉毛に、腰近くまである長い黒髪のストレート。  気が強く、負けず嫌い。学校での評価は、“格好いい”という女の子としてはどうか、というもの。  男子にも人気はある ――容姿は良いのだ―― が、女子からの人気度の方が圧倒的に高い。バレンタインデーは何時も大変なのだそうだ。  まあ、俺には関係ないが。 「……ふぅ」  ココアを飲み切った俺は、コップをお盆の上に乗せた。  体が急速に熱を取り戻していくのが、実感出来る。生き返るようだ。  ん?  不意に殺気を感じ、俺は顔を上げる。  顔から朱の色が消えた美沙が、今度は俺を半眼で睨み付けていた。 「ねえ、あんた、男としての義務、わかってないでしょ」  それは、今にも爆発寸前だとわかる口調。下手な対応をしたら、目の前の少女は確実に怒り狂うだろう。  しかし、俺は遠慮なく油を注ぐ。 「はあっ? 義務って何だよ? さっぱりだ」  当然、彼女の表情が怒りに染まる。  美沙の言葉の意味がわからないのは本音だがな。いや、本音だと感じ取れているからこそ、怒っているのかもしれない。 「本当にわからないのっ!?」  美沙が声を荒げる。  俺はわざわざ挑発的に返した。 「……さっぱりだな」  わざとらしく、肩をすくめてみせる。  その態度に彼女の我慢は、限界を突破したようだ。  彼女の体が怒りに震え始める。
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