Childhood friend

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「このっ、女の敵っ!」  叫びながら、手近にあった雑誌をぶん投げてきた。  それは一直線に俺の顔面へ。  まあ、こんだけ至近距離で外す奴はいないよな。  そんなことを呑気に考えながら、俺は首を右に傾けて、それを回避する。 「避けるなっ!」  美沙が次なる武器を手にしながら叫んだ。  いやいや、普通避けるだろ。……当たったら痛いし。  次々と飛来してくる物を、回避出来ない物は受け止め、出来る物は回避する。  全く命中する気配がないことに、美沙の表情がどんどんと険しくなっていく。 「このっ、いい加減にっ!」  美沙が自分のコップ ――まだココアが入ったままの―― を持ち上げた。  流石にギョッとなる。 「待てっ! それは洒落にならねえ!」  俺は慌てて彼女が持つコップに手を伸ばした。  それを見て美沙の目がキラリと光る。 「隙ありぃっ!」  彼女はコップを持っていない方の手で拳を作り、俺の顔面目掛けて打ち出した。  パアンッ!  乾いた音が鳴る。  自分の奇襲の成果に、美沙は悔しそうに唇を噛んだ。 「危ねえ……」  俺は間一髪、美沙の拳を右手で受け止めていた。  次いでに、美沙の手からコップも取り上げる。 「今日は割と惜しかったな」  くだらない優越感に浸りながら、俺はポンポンと彼女の頭を叩いた。 「うぅ~……」  美沙が心から悔しそうに唸った。  本気で当てるつもりだったんだな、と内心で呆れる。  それにしても、俺の周りの奴らは、なぜこうも攻撃的なんだ?  俺は心の中で大きな溜め息をついた。 「それはそうと……」 「ん?」  俺の言葉に美沙が不思議そうな声を漏らす。  これを言ったら、また同じことが起きそうだな。だが、言わない訳にもいかないか。  逃げ出したくなる衝動を無理やり抑え、俺は決意して口を開く。
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