Childhood friend

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「ところで、男の義務って?」 「――っ!?」  俺の発言を聞いて、美沙が声無き声を上げ、俯く。  室内の温度が、一瞬にして二度下がった気がした。 「あんた、やっぱり女の敵ね」  地獄の底から響くような声に、背筋が寒くなる。  美沙が顔を上げ、俺をキッと睨んだ。 「女の子の裸を見たら、動揺するなりするのが普通でしょ! つーか、礼儀!」  美沙が、ビシッと俺に人差し指を突き付ける。 「なのに、何であんたはそんなに冷静なの!? こんな可愛い女の子の裸を見たのよ!?」  俺は優しいから、『可愛い』には突っ込まない。  まあ、わざわざ美沙を、さらに怒らす必要もない。 「いや、幼なじみだし。俺からしたら妹みたいなもんだからな。妹に欲情したら、流石に人としてマズいだろう」  トカゲなら平気で欲情しそうだがな。  しかし、美沙は俺の言い分に、納得出来なかったようだ。怒りの形相は、未だ消えていない。 「例え妹だとしても、色っぽい大人の女の裸を見たら、普通動揺しない!?」 「…………」  美沙のその発言を聞いた途端、俺は口元を手で押さえ、後ろを向いた。  体が小刻みに震え始める。止まれと念じても止まらず、むしろより激しくなる。 「……陽平?」  先程までの怒鳴り声ではなく、静かで落ち着いた声音。それ故に、深い怒りを感じさせる。 「…………」  込み上げてくる衝動を抑えるのに必死な俺は、返事が出来なかった。 「よ・う・へ・い?」  美沙がさらに怒りを込め、俺の名を呼ぶ。しかも、ご丁寧に一音ずつ区切っている。  その時、俺は衝動を抑えきれなくなった。 「ははっ! ……色っぽい? 誰が? ははっ……」  笑い続ける俺は、美沙の顔がどんどんと赤黒くなっていくのに、気付かなかった。 「大人の女っ!? ははっ……ぺったんこのくせに?」  最後の言葉がスイッチになった。 「ははっ、ヤバっ、腹が――!?」  突然殺気を感じ、俺はそっちに顔を向ける。  何かが飛んできた。 「甘い!」  俺はそれを受け止める。  バシャッ  コップの中に入っていたココアが、俺の顔に盛大にぶちまけられた。
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