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本日の授業も全て終わり、放課後。
和泉は、今日の部活は休みなのだが、用事があるとかで先にさっさと帰ってしまった。
以前良く一緒に帰っていたトカゲとは、俺が和泉と付き合うようになってからは一度も帰っていない。
よって、俺は一人で帰路をゆっくりと歩いていた。
その道中、時たま意味も無く後ろを振り返ってみたりする。
「ふう……」
口から自然とため息が漏れた。
回数を数えるのはもう止めた。これで今日二十回は出ただろうか?
先程は、“意味も無く”と言ったが、一応意味があることはある。
単なる気休めだ。
朝から感じる嫌な予感。
背後の無事を確認することで、その予感が少し和らぐ気がするのだ。
本当に気休めだよな。
自分でも呆れつつ再び後ろを振り返る。
「……はあ」
そして、またため息が漏れたのだった。
そんなことを数回繰り返している内に、家の前にたどり着いていた。
家まで来れば、もう大丈夫だな。
心の中で安堵の息をつきながら、家の中への扉を開ける。
しかし、次の瞬間、玄関にある多数の靴を見て俺は固まった。
この家の者のでない靴が計四足。全ての靴が誰のものであるかが、俺には判別出来た。
そして、メンバーの構成を知った俺は、この家から脱出することを迷い無く決断する。
回れ右をし、扉に手を伸ばす。
が、少し遅かった。
「あら、お帰りなさい」
母親に見つかってしまった。
「お友達が来てるわよ」
二階から降りて来る母親。
おそらく、お茶でも出しに行っていたのだろう。
未だに背を向けている俺に、母親が不思議そうな声で尋ねる。
「扉の方を向いて何してるの?」
お友達が来てるから脱出しようかと。
「お友達を待たせちゃダメよ」
母親はそう言って台所に引っ込んで行った。
「あーあーあー」
意味不明な声を上げて現実逃避を試みるが、当然無駄。
覚悟を決めるか。
嫌な予感はバリバリだが、いつまでも玄関で立ち止まってるわけにはいかない。
靴を脱ぎ捨て、俺の部屋へ。
否、戦場へと向かった。
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