Childhood friend

14/17
前へ
/114ページ
次へ
  「よう、遅かったな」  自分の部屋の扉を開けた俺を一番最初に出迎えたのは、亮の満面の笑みだった。  その背後に視線を向けると、不機嫌そうな表情でお菓子を貪る美沙とトカゲの姿。部屋の主が入って来たというのに、見向きもしない。 「お、お邪魔してます……」  次いで、遠慮がちな声が上がる。和泉だ。  和泉がいるだろうことは予測がついてはいたが、脱力感に見舞わられるのはどうしようもなかった。 「なんで和泉まで……」  そんな言葉がため息と共に漏れる。 「え、えと……伊達君に無理やり連れて来られて……その、ごめんなさい」  和泉がしゅんと頭を下げた。  その頭頂部に、安心させるように手を乗せる。 「気にするな。お前は何も悪くねえよ」 「……うん」  撫でてやると、和泉は嬉しそうに目を細めた。  不覚にも、愛おしさを感じてしまった。 「!」  不意に、背後から殺気が発せられる。 「和泉ちゃんに触れるなー!」 「陽平のスケベ!」  俺の存在を無視してお菓子に没頭していた二人が、急に激昂した。 「やかましい!」 「あっ……」  和泉の頭から手を放す。和泉が名残惜しそうな声を上げたが、構ってやる余裕はない。  ……俺だって名残惜しいが、仕方ないんだ。 「で、亮。何を企んでいるんだ?」  飛びかかって来たトカゲを蹴り飛ばし、美沙が投げてくる物を避けながら、四人を俺の家に集めた真意を、亮に問い質す。 「企むなんて、人聞きの悪い!」  亮が非常に生き生きとした表情で叫んだ。  こいつは頭は悪いが、こういう悪巧みに関しては、なぜか頭が回る。厄介なことに。 「俺は、『譲れぬ思い! 河瀬VS沢木、陽平争奪戦!』の開催をここに宣言する!」  静寂が訪れた。  …………は? コノアホハ、ナンテイッタンダ?  理解したくないのに、徐々にその言葉の意味が脳に浸透して来る。  同時に目眩も進行した。
/114ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7167人が本棚に入れています
本棚に追加