Childhood friend

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 最初に沈黙を破ったのはトカゲだった。 「陽平! お前なぁー!!」  トカゲが俺の襟首を掴み、ガクガクと揺する。 「うぜえっ!」  考えるより先に体が動いた。  頭を振り下ろし、トカゲに頭突きを食らわす。 「痛っ!?」  トカゲが頭を押さえて後退する。そのトカゲに容赦なく跳び蹴りをぶち込んだ。 「げへっ!」  トカゲの体が吹き飛ぶ。  同時に亮が動いた。そのトカゲの進路上にある窓を開ける。 「え? あ、うわっーー!!」  トカゲの姿が、俺たちの前から消えた。上から下へ。 「ぎぴっ!?」  奇妙な声を上げて、トカゲは墜落した。  よい子は絶対に真似するなよ。死人が出るし、君も警察に捕まるから。 「ちょっと、陽平くん! 伊達くん!」  呆然としていた和泉が我に返り、騒ぎ出した。その極めて普通の反応に、新鮮な感じを受ける。  落ち着いてる俺らは、きっと腐ってるんだろうな。 「大丈夫だって。この窓の下、雑草が生えてて芝生みたいになってるんだ」  今までに、トカゲは何回も落ちてる。全て無傷だ。だから、今回も平気だろう。 「でも、あんたこの前雑草全部抜いてたじゃない」  美沙からの衝撃的な一言。  確かに、三日前に抜いたな。すっかり忘れてた。  セーフティーが一個外れました。 「…………」  俺は沈黙する。 「でも、ほら。トカゲって、再生機能持ってるじゃん」  亮がそんなことを言う。  再生機能があるのは、尻尾部分だけだ。  そんな突っ込みを心の中だけで入れた。和泉と美沙もきっと同じことを思っただろうが、口にはしない。そんな元気もない。  セーフティーが全て外れました。  誰も窓の外を覗いてトカゲの安否を確認しない。 「…………」  場に再び沈黙が訪れた。  そんな中、俺たちはアイコンタクトで互いの意志を確認し合う。  トカゲのことは忘れよう。
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