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「それじゃ改めて、『譲れぬ思い! 河瀬VS沢木、陽平争奪戦!』を執り行う!」
トカゲのことをきっぱり切り捨てて、亮がこっぱ恥ずかしいイベントタイトルを叫んだ。
…………。
マジでそれで行くつもりかよ。
俺の心の中の嘆きに気付く様子もなく、亮が自分の鞄を漁り、何かを取り出す。
「はい、沢木と河瀬さん、これを」
そう言って亮が取り出したのは、小さなのボタンとコードでつながったヘルメットだった。手元のボタンを押すと、ヘルメットの札が上がる例のアレだ。
「なんでそんなの持ってんだよ!?」
「いつか使うと思って、二年前に買った」
お前、すげえよ。
「これでいいの?」
その声に振り向くと、和泉と美沙のしっかりとヘルメットを被っている姿が目に入った。
「お前ら……」
二人ともやる気満々。ああ、体中の力が抜けていく。
「よし、始めるか。陽平、どっちが早かったかの判断よろしくな」
「はいよ」
手をひらひらと振る。もう好きにしてくれ。
「二人とも、準備はいいかい!?」
「はい!」
「いつでもいいわよ!」
二人の態度に、亮は満足そうに頷く。俺は気のない目で眺めていた。
「それじゃあ、第一問!」
亮が高々と指を天に向ける。
「陽平の身長と体重を――」
「「はいっ!」」
ほぼ二人同時に声を上げ、ほぼ同時に二人の頭上の札が上がる。
なっ……
「流石だ! 二人ほぼ同時! 陽平、どっちが早かった!?」
亮が視線を俺に向ける。遅れて、和泉と美沙も刺すような視線を向けてきた。
「え、あぁ、和泉が少し早かった……」
戸惑いつつも、それだけ口にする。
「やった!」
「ちっ」
「では、河瀬選手、答えを!」
あれ? 二人の反応の速さに疑問を持ったのは俺だけなのか?
「身長が178.3㎝、体重が58.1㎏です!」
「大正解!」
ちょっと待てぃっ! 何故、和泉がコンマ以下の数字まで知ってる!? しかも、亮が何故正解だと分かる!?
「それじゃあ、第二問」
しかし、当然のように対戦は進行していく。
「去年陽平がバレンタインデーに――」
「「はいっ!」」
またまた、ほぼ二人同時。
だから、何故そんなに反応が速い!?
「今のは俺にも分かった! 沢木、答えは!?」
確かに、美沙が早かった。美沙に会心の笑みが浮かぶ。
「十九個!」
「正解!」
俺のプライバシーはどこに……。
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