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「よし、ラスト問題行くぞー!」
「「おー!」」
本日最高の盛り上がり。俺は本日最高の盛り下がり。
「なあ、いい加減俺のプライバシーを」
「第三問!」
やはり無視ですか。いや、分かってたけどな。
和泉と美沙に視線を向ける。二人とも手をボタンの上に乗せ、亮の言葉を一言も聞き漏らさないよう集中している。めっちゃ真剣だ。
勝つのは私。
勝つのはあたし。
そんな言葉が聞こえてきそうな程、二人の表情に必死さが浮かんでいた。
「勝つのは私、勝つのは私」
「勝つのはあたし、勝つのはあたし」
……実際に呟いてたよ。
「陽平の全身にあるホクロの数は何個でしょう!?」
……これ知ってたらヤバいだろ。
さすがに今回は二人とも、すぐにはボタンを押さない。代わりに、俺の体をじっと見つめて来た。
「はい!」
まず先に、和泉の札が上がる。
「十二個?」
亮は正解とも不正解とも言わず、視線を美沙に向けた。同時に美沙の札も上がる。
「どうぞ」
「八個?」
「ふむ……」
またもや、亮は黙り込む。ふと、視線を俺に向けてきた。その顔が邪悪に笑う。なんか、かなり嫌な予感。
「この問題の答えは俺も知らない」
だろうな。知ってたら完全なストーカーだ。
「そして、おそらく陽平自身も知らないはずだ」
「ああ」
……しまった! 事実だったので、思わず頷いてしまった。適当にでも答えれば良かった。深まった亮の笑みが嫌だ。
「じゃあ、どうやって確かめるの?」
美沙が俺の方を向く。その頬が僅かに上気しているのは気のせいではないだろう。
「ま、まさか……」
和泉もこちらを向いた。表情は美沙と全く同じ。
展開が完全に読めた。よって、逃げるのみ。俺は腰をすかさず浮かす。だが、敵はもっと早かった。
「陽平をひんむけー!」
「「やー……」」
「うわあぁっ!?」
和泉と美沙が俺にのしかかり、服を脱がしにかかる。
「ちょっ、お前ら止め……うわっ!」
二人とも目がヤバい。マジ怖い。完全にいっちゃった目だ。
「陽平! なんだそのハーレムは!?」
げっ、トカゲ。復活しやがったのか。つーか、お前まで乗るな!
「りょ……」
部屋の中を見回す。亮の姿がない。
「覚えてろー! 亮おぉぉっ!!」
俺の叫び声は、虚しく夕闇に溶けて消えていった。
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