7167人が本棚に入れています
本棚に追加
「あ~、昨日はヒドい目に会った……」
昨日のことを思い出すだけで、気分がズドンと沈む。なんとか、最後のトランクス一枚は死守したが、後は全部脱がされた。
「いよう!」
不意に肩に腕が回される。その声と軽薄な口調で相手が誰か分かり、右の拳を握り締める。
「昨日は結局どうぐぼっ!」
亮の顔面に裏拳を叩き込んだ。亮が鼻の頭を押さえて痛みに呻く。
ざまあみろ。
「痛たた……あれ、河瀬さんは?」
亮が辺りを見回す。今頃そのことに気が付いたのか。
「さあな。今日は美沙も和泉も家には来てねえよ」
「ふーん。昨日の一件に恥ずかしさでも感じたのかな?」
そう言いながら、まだ忙しそうにキョロキョロと顔の向きを変える。
止めろよ。その様子こそ何か恥ずかしいぞ。
「ん?」
不意に亮の首の動きが止まった。
「どうした?」
亮の視線の先に目をやると、人が四人立っていた。一人の少女を塀に押し付け、ガラの悪そうな三人の男がその子を囲んでいる。
「あの制服……」
亮の囁きに頷いて返す。
「ああ、うちの制服だな」
男らの言葉に少女は首を横に振り、必死に抵抗している。一言で言えばナンパだが、もっと悪質に見える。放っておけば、拉致しかねない雰囲気だった。
「ちょっと、離して下さい! いやっ!!」
見て見ぬ振りは出来ないし、仕方ないな。
「正義の味方、しゅつどふっ!」
その前に、こいつは場をかき乱しかねないので、とりあえず動けないようにした。
そして、ゆっくりと歩を進める。
「ん? 何だてめえ?」
男のうちの一人が寄って来た。その表情から俺のことを侮っているのがわかった。好都合だ。
「俺たちの邪魔をしようってのか? 痛い目見たくなけりゃっ!?」
男が言葉を言い終わらぬうちに、右拳を男の鳩尾に埋めた。
最初のコメントを投稿しよう!