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男の腹から拳を引き抜く。
「お、お……」
痛みに声を上げられず、男がその場に膝をついた。その様子を見て、仲間は一瞬唖然とした後、当然のごとく激昂する。
「野郎っ!」
残りの二人が襲いかかって来た。
「へっ」
ちょうどいい憂さ晴らしになりそうだな。
目の前で膝をつく男を左側の男に向かって蹴り飛ばして足止めし、その間に右側の男に接近する。
「こいつっ!」
男が右ストレートを放つ。だが、大振りなうえ、速度も遅い。
右の裏拳で男の腕を左側から叩き付けた。力のベクトルを狂わされ、男の体勢がぐらりと傾く。その隙に背後に回り、男の首の裏に手刀を落とし、意識を絶った。
残り一人!
もう一人の男が、自分にもたれかかってきた仲間を突き飛ばして、こちらに向かって来た。
「調子に乗りやがって!」
男はアッパー気味の軌道で右の拳を突き上げてくる。先程の男のより、速く鋭い。あくまで、先程の男のよりだが。
拳が俺の顎を捉える前に、左の手で男の手首を捕まえた。
「なっ!?」
驚愕の声を漏らす男の胸に右手を当てて突き飛ばし、少し距離を離す。そして、右のハイキック。つま先が顎を打ち抜き、男をその場に昏倒させた。
「ふう」
三人共、すでに戦える状態じゃないのを確認し、体の力を抜く。
「さっすが♪」
亮が駆け寄って来た。少し、顔色が悪いな。風邪か?
それはさて置き、唯一、意識を失っていない男に目を向ける。男があからさまに表情を強張らせた。
「二度とうちの学校のやつらに手を出すなよ。分かったか?」
男がもの凄い勢いで首を縦に振る。首が千切れそうだな。
「分かったら、そいつら連れて、さっさと帰れ」
そう言うと、男は仲間二人を連れて、後ろを振り返ることなく、一目散に走り去って行った。いや、本当に見事な逃げっぷりだ。
「さて、大丈夫か?」
男たちが見えなくなったのを確認し、助けた少女に声をかける。
「あ、はい……」
しかし、少女は呆けているのか、返事がイマイチ頼りない。
改めて、少女を観察してみた。
整った顔立ちに、ぎりぎり肩にかかる程度の髪型。身長はあまり高くはないが、服装の上からでもスタイルが良いのが分かる。
和泉に勝るとも劣らないほどの美少女だ。
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