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一通り少女を観察し終え、再び声をかける。
「本当に大丈夫か?」
「あ、はい……」
先程と全く同じ答え。まだ呆けているようだな。
「正気になってる?」
「あ、はい……」
「1+1は?」
「5」
「…………」
完全にダメだこの子。頭が痛くなってきた。
良く見ると、頬が赤く染まっているような気もするけど、気にしない。深く考えたら、俺も正気を失うかもしれん。
「なぁ、どうす……」
救いを求めて、後ろを振り向き、固まった。
亮がいねえ! 何時の間に!?
「覚えてろ、あいつ……」
昨日の分も纏めて返してやろうと心に誓う。ふっふっふっ、と暗く笑った。端から見れば、相当怪しかったかもしれない。
それはさて置き、どうすっかな?
少女に目を向けた。相変わらずの状態、さっきから何も変わってない。
「俺もう学校行くけど、君はどうする?」
「あ、はい……」
会話にならねえ。
「亮って、本当に馬鹿だよなぁ」
「あ、はい……」
「1+1は?」
「5」
よし、もう放っておこう。この子の正気回復は、きっと望めない。
俺は少女に背を向け、歩き始める。
スタスタ
スタスタ
「…………」
スタスタ
スタスタ
ピタ
ピタ
「…………」
なんで!? なんで、ついてくる!?
少女の方に振り返った。相変わらずのぼうっとした表情。しかし、さっきよりも頬の赤みが増し、目も潤んでいた。それはまるで恋する……いや、気のせいだ。俺は見てない知らない分からない。
そんなことよりも聞きたいことがある。
「なんで、俺の後をついてくるの?」
学校に行かなければならないから、行く方向が同じなのは分かるが、俺の数歩後ろをぴったりマークする必要はない。
彼女の答えは……
「あ、はい……」
予想出来てたけど、やっぱり脱力感に襲われるな。つーか、いい加減分かれよ俺。
「1+1は?」
「4」
おお、一個近くなった。って、違うから!
そういや時間は?
「げっ!?」
携帯のディスプレイで時間を確認すると、思わず声が漏れた。遅刻寸前。もう、少女に構ってやる余裕はない。
全力で走らないと確実に間に合わねえな。彼女は遅刻するだろうが、我慢してもらおう。というか、撒くチャンス到来!
よーい、ドン!
そして、俺はギリギリセーフ。少女はアウト。
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