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「和泉? 美沙?」
「「コーホー……」」
ダメだ。完全にダークサイドに入ってしまってる。ここにいる限り、俺の未来は死しかない。
「うらああぁぁっ!」
「ぐはっ」
腰に神谷を抱きつかせたまま、俺は気合いで立ち上がった。俺の足腰の強さ凄くないか? 足元で呻いてる奴は当然無視。
「ダーッシュ!!」
二人が驚いている間に、脇をすり抜け教室のドアへと走る。
「逃がさブペッ!?」
脱出を妨害しようとした男子クラスメートAを殴って排除した。俺は謝らないぞ。
そのまま教室を出て、廊下をひた走る。周囲の視線が痛いが、今は気にしてる場合じゃない。
「おい、あれ松永だ! 女を抱きつかせて走ってやがる!」
「河瀬さんのハートを奪っておきながら何を……」
「沢木さんもどうしてあんな奴に……」
今は気にしてる場合じゃ……。
「一年のマドンナ、優花ちゃんまで松永の毒牙に。なんてことだ!」
「浮気する奴って最低よねー。私たちも気をつけなきゃ」
「トカゲの友人。類は友を呼ぶ」
…………。
泣いてもいいですか?
「陽平くん。逃がさない……」
「待ちなさい陽平!」
何っ、追って来やがっただと!?
「逃がさんぞ、陽平っ!」
更には、前からトカゲが現れた。
くっ、挟み撃ちか。というか、いつの間に? だが、これはチャンスだ。
「トカゲ、俺を助けろ」
「嫌に決まって」
「美沙の着替え隠し撮り写真を五枚やろう」
「助けよう」
流石はトカゲ。欲望に忠実な奴だ。もちろん写真をやるつもりは微塵もない。それ以前に持ってすらない。本当だぞ?
「よし、俺は下に逃げる。二人が来たら、俺は上に行った、と上手く丸め込んでくれ」
「わかった。任せろ」
トカゲが右の親指を立て、良い笑顔で笑った。あいつは期待を裏切らない男だ。
この場はトカゲに任せ、俺は全力で階段へと向かう。
「あっ、坂下くん。陽平くん見ませんでした?」
「あいつなら上に逃げてったぜ」
「サンキュー。河瀬さん、下に行くわよ」
「えっ、でも……」
「こらっ、沢木! なぜ俺を信用しない!」
「トカゲのことだから、どうせ買収されたに決まってるわ。だから、あんたが教えたのと逆に行く!」
「待ってくれ、俺の褒美の写真が」
「死ね!」
「げばっ!」
流石トカゲ、期待を裏切らない男。
俺は静かに屋上への扉を開けた。
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