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二人の鉄拳制裁を食らった両頬を押さえつつ、俺は午後の授業を受けていた。だが、優花のことを考えているので、先生の言葉は右耳に入って左耳から抜けていき、ほとんど聞いていない。
ある程度考えを纏め、俺は授業中にも関わらず携帯を開いた。そして、和泉と美沙と亮にメールを送る。
『今日、一緒に帰らないか?』
すると、間髪入れず返信が来た。亮からだ。
『部活があるから無理』
まあ、だろうとは思ったが。亮はサッカーの推薦で来ているからな。無断欠勤は絶対に許されないのだ。
後の二人は部活どうかな? ちなみに、和泉がバレー部で美沙がバスケ部。
と思ってると、美沙からメールが返ってきた。
『あんたから誘うなんて珍しいわね。まあ、別にいいわよ』
美沙が帰れる、ってことは和泉は無理だな。
うちの体育館は一つしかないから、半面を女子バレー部と女子バスケ部が交互に使っている。だから、今日はバレー部の日だということだ。
……と、メールが来た。和泉からだ。あいつは優等生だから、授業が終わるまで返さないと思ったんだが。
『今日はバレー部休みだから大丈夫だよ♪ 後、授業中に携帯触っちゃダメだよ?(笑)』
可愛く怒られた……って、俺の精神がトカゲに毒されてる気がしてならない。
てか、バレー部ないなら今日バスケ部の日じゃん。美沙の奴、サボる気か。
「おい、松永。アセチレンに硫酸水銀(Ⅱ)を触媒として水を付加させると、どんな反応をするか、説明してみろ」
俺が思索にふけっている最中に、化学の教師が当ててきた。どうも俺はこの学校の教師陣に、特に男性教師に嫌われてる気がする。
「不安定なビニルアルコールを生成するが、直ぐに安定なアセトアルデヒドに異性化する」
「ちっ、正解だ」
舌打ちしやがったよあの野郎。教師が一生徒に舌打ちとかして良いわけ? 良いんだったら、日本の教育制度を疑うぞ。まあ、あんなハゲのことはどうでもいいんだけどな。
俺は和泉と美沙に再度メールを送る。
『なら、終礼が終わったら校門の所に集合な』
決して集合を教室にはしない。したら、色々とややこしいことになるのは、わかりきっているからだ。
二人からの了承のメールを待ちながら、俺は再び優花のことを考え始めた。
この後、化学の教師が俺に三度当ててきたが、全部答えてやった。ざまあみろ。
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