14人が本棚に入れています
本棚に追加
セイジがドギマギしながら踊り場を見上げていると、上から何かを放ってきた。
とっさに受け止める。
見るとそれは、オレンジ だった。
―覚えててくれた!?―
なおも見上げていると、上から声がした。
「ヒマなら 上がってくれば?」
少しアルト気味の声だ。
―女の子かぁ―
カンカンカンと階段をのぼり、少し間をあけて隣に腰をおろす。
「何してるかって?んー別に何もしてないけどー。夕涼み?」
彼女はゆっくりとした口調で、まるで知り合いにでも話すように言った。
「オレンジ好きなんだね」先ほどのオレンジを渡しながらセイジが問いかけると
「食べた事は無いけどね。香りとねー色がなんか落ち着くんだなあ。それは、あげる」
そう彼女は答えた。
オレンジを食べた事が無い というのも珍しい。だけど好きだという彼女を少し不思議に感じた。
最初のコメントを投稿しよう!