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オレンジ がひとつ
前方にあるフルーツショップからでも転がってきたのだろうか?
あまりに鮮やかな それ に見入っていると、なにやら視線を感じた。
セイジは慌てて顔をあげ、辺りを見回す。
― ! ―
ひしゃげた紙袋を抱えた小柄な人影が じっ と足元を見つめている。
「あ、これ…?」
とっさに言葉が出なかったので、セイジはそう言ってオレンジを差し出した。
「ありがとう」
小首をかしげ 口の両端をかすかに上げただけ の微笑みでオレンジを受け取るその人物を、セイジは不思議な感覚で見ていた。
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