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モヤモヤの正体(といっても、気配)を感じた気がしたからだ。
そこは、廃ビルの裏側だった。
錆びた非常階段と、しょぼくれた外灯が一基あるだけで、薄暗い。
たとえ人影を見たとしても顔立ちまで判るはずもなかった。
近づいてみると、白っぽい人影が、階段の踊り場に腰をおろしている。
―あの、オレンジのコに違いない!―
何故か、セイジには変な確信があった。
「あの~」
恐る恐る声をかけると、人影は ふぅ とタバコの煙を吐き出し、返事もせずに下を見た。
その面立ちは、あの時の人物に間違いない。
タバコを吸っている事に少し驚いたが、続けて声をかけてみる事にした。
「あの~そこで何をしてるんですか?あ、いや、別にそこに居て悪いとか、そんなんじゃないんだけど…」
声をかけたのはいいが、何を話そうとかは考えていなかった。
ましてや、向こうが自分を覚えている保証もない。
内心、焦りまくりだ。
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