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目覚めた時、アレンはベッドに横たわっていた。それを覗き込んでいたクロノスは、彼が目覚めたのを確認するや口に手を当てて声を出した。
「おっ、気が付いた。おーいアテナー」
いきなり疑似般若様を呼ぶのでアレンはギクッとした。
「ちょ、ちょっと待て! 今プロレス技なんか食らったら確実に死ねる!」
「バーカ、酔いなんかとっくに醒めたっての」
「あの、アレン……」
やってきたアテナはもじもじとしてうつむいたまま呟くので、ほとんど声が聞こえない。と思えば、
「ご、ごめんなさい!」
ひっくり返るほど大声で謝られて拍子抜けするアレン。
「あ、いや、いいんだ。俺のほうが悪かった」
苦笑しながら彼までもが謝る。すると、落ち着いたと判断したのかヴァースが彼のベッドに腰掛けた。その表情から真剣な話だとすぐに悟り、彼は体を起こした。
「さて、明日のことについて少し話そうか」
「ゼロサイドの居場所ってどこなんだ?」
尋ねるアレンにヴァースが丁寧に説明する。
「奴は空中庭園付近の空間に切れ目を入れて、その内部の次元に城を創りあげ、そこを本拠地としていた。レスメインの中に空間を操る奴がいるらしい。今もなお、そこはレスメインどもの住まいのはずだ」
「飛空艇で突っ込むってワケか」
肩から昇らせる炎の背景でやる気を表すクロノスに頷くヴァース。
「奴らも必死で我々をはばんでくるだろう。上級の黒き存在も数多く相手にすることになる」
それを聞いて、アレンは前々から訊こうと思っていたことを思い出した。
「ヴァースって黒き存在に詳しいよな。なんでだ?」
「指輪の情報から、我々の親が戦った黒き存在の種類などを学んだんだ」
「なるほど、……なぁクロノス、神の力を使った時ってどんな感じだった?」
いきなり話を振られて一瞬驚くクロノス。訊いてばかりかよと呆れたように肩をすくめた後、思い出しながら答える。
「そうだな……。なんつうか、高揚感があった。何でも出来そうな気がしたぜ」
「一種の興奮状態だな。だが調子に乗ると痛い目を見るぞ。黒き存在とレスメインでは実力が違いすぎる。神の力を以ってしてもそう簡単にいく相手ではない」
「解ってるって」
「解ってないだろ」
からからと笑うクロノスにアレンがぼそっと呟く。
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