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「ふあぁ……。ん? お前ら、眠れねぇのか?」
二人はギクッとして離れた。クロノスが目をこすりながら話しかけてきたのだ。どうやら、寝惚けていて二人の会話は聞いてもいないし、二人の姿を見てもいなかったらしい。
「ビ、ビックリさせんな! お前こそ眠れないのかよ!」
「なんでビックリする? 俺はあっち」
そう言って洗面所を指差すクロノス。言葉を詰まらせていたアレンは助けられたようなもので、ばつが悪くてもうアテナの顔を見られなかった。
「ったく、さっさと行ってこいよ」
「なに焦ってんだお前?」
「なっ、何でもない! 寝る!」
言い放ち、アレンはつかつかとベッドに向かっていってしまった。クロノスはその様子を訝しげに見、肩をすくめて洗面所に行った。
「アテナ」
クロノスが見えなくなるのを待ってアレンが振り返る。
「お前も何とか寝たほうがいい。明日は今までで一番大変な一日になるぞ」
アレンはその場から逃げたかった。どうすればいいか解らなかったから。しかし、いずれアテナの問に答えなければならない時が来るとも解っていた。そして、その時は恐らくとても近い。彼女はそれを悟っているかのように、素直に頷いた。
「……解ったわ。おやすみなさい」
アテナも、それ以上は口を開こうとしなかった。
「ああ、おやすみ……」
クロノスが戻って、窓のそばに立ち止まって呟いた。
「ゼノン、もうすぐお前の所に帰るからな」
クロノスを含めた三人はベッドに戻った。ベッドの中で、アレンは頭の中をどうにか整理しようと努めた。しかし、どれだけ経ってもどうすればいいのか、答えは見つからない。
「アテナ、俺は……」
アテナを一瞥すると、彼女はもう眠ったように見えた。
「やっぱり、眠れそうにないな……」
月明かりの下でアレンは、一晩中星々の輝く夜空を見ていた。
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