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二人を乗せた車は二時間ほどで橋上都市ブリトンに到着した。
「ありがとうございました」
「ありがとよ」
「いいのよン。じゃあね、ボウヤ達」
言って女性は投げキッスをアレンにプレゼントし、去っていった。アレンはあまりの寒気に風邪をひきそうだった。
正午を回ったが、このまま町を通り過ぎていけるほど二人に体力は残されていなかった。二人は、このブリトンで宿をとることにした。
「金は心配ないよな? 王女なんだし」
「えっと、城を抜け出した時にお金はあんまり持ってこなかったの。宿一泊分くらいならあるけど、この先、毎日宿をとるのは無理でしょうね……」
「そ、そうか……。まあいいさ、野宿しても」
「私はちょっと嫌だけどね……」
二人が宿に入ろうとした時、通りのほうから耳をつんざくような悲鳴が聞こえた。酒場で誰かが暴れている、とかそういうものではなさそうである。
「た、大変だ! 向こうで人が変な黒いのに襲われてるぞ!」
助けを呼びに来た男が大慌てで叫ぶのを聞いて、二人は身を固めた。
「黒いのって、まさか!!」
「行きましょう! あの時、黒いローブの人が言っていたように、この指輪の力でしかあれを消せないなら、私達が行くしかないわ!」
アテナのアグレッシブさに多少驚いたアレン。二人は大急ぎで走ったが、待っていたのはこの前出現したような小さいものではなかった。二階建ての家よりも大きく、角の生えた虎のような怪物である。
「おいおい嘘だろ? こんな奴までいるのかよ!」
「襲われてた人は……!?」
「あっ、見るな!」
来るのが遅かった。襲われていた人は、怪物の角によって貫かれ絶命していたのだ。
「そんな、なんて酷い……」
アテナは口を手で覆った。
「奴を倒す! 早くしないと、大変なことになる!」
「いや、やめてアレン! あんなの倒せるはずないわ! あなたまで殺されてしまう!」
アテナの声は震えていた。しかしアレンはアテナの肩に手を乗せ、その目を見つめた。
「アテナ、奴を倒せるのは俺達だけだって、お前も言っただろう? それに、こんな怪物を放っておくワケにはいかない! お前は下がってろ! 任せとけって!!」
「アレン!!」
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