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「どうじゃな、アレン殿? なに、この国なら心配はいらんよ。国王はまだまだ若い。そう簡単に王座が空くことは無いじゃろうて」
「それは問題が違うような……。でもまあ、いいんじゃないか。一人よりも二人のほうが楽しくなるだろうしさ。それにお前、けっこうかわいいし……」
アテナはたちまち赤面した。近くにあった本を引っ掴むと、奥のほうへ素っ飛んでいってしまった。
「……。えーと、何か変なこと言った?」
「わっはっは! これまで城の大人達としか接したことがないんじゃ。同じ年頃の男の子に、かわいいなどと言われたことが無いんじゃろう。しかし、アレン殿は中々お目が高いのう。確かに、アテナは稀に見る美少女じゃよ。親に似たのか─────」
ファズは微笑んで言ったが、ハッとして口を噤んだことにアレンは気付いた。
「でも、どうやって国外に出るの?」
戻ってきて尋ねるアテナの顔は、まだほんのり赤かった。
「外に出るためには、ゲートを通らなくちゃいけないのよ。アレンはいいけど、私が見つかったらすぐに連れ戻されちゃうわ」
「変装とかは?」
「もっとよい方法がある。この家の裏には、地下を通って国外に通じておる通路があるのじゃ。そこを通ってゆけば、おそらく誰にも見つからんじゃろう」
なぜそんな通路があるのかとアレンは思ったが、今はそんなことも気にならない。旅の準備は万全に整えてきたアレンも、一人で旅をするのには多少の不安があった。しかし今は、女性と接したことがほとんどない彼だけに、アテナと二人で旅をするということに内心ドキドキして、うまくやっていけるかという不安のほうが大きかったのだ。
「さてさて、出発は早いほうがよい。今夜がよいじゃろう。準備ならワシに任せておきなさい」
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