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地下道から出たアレンとアテナの前には、グランディオブリッジが広がっていた。端から端まで見るのに、首を三十度ほど動かさねばならないほどの広大な橋である。
「おお! 橋の前まで通ってたのか。王都がもう遠い。それにしてもでかいなぁ。橋の上に町一つ作れそうだぞ!」
アレンが興奮していると、アテナがおずおずと話しかけた。
「あの……、アレン?」
「ん、何だ?」
「さっきのこと、本当に気にしなくていいの? 何だか意味深長なことも言っていたし……」
「いいさ。俺達は旅に出るんだぜ? 自由だ! さっきみたいなことだってたくさん起こるさ。それを一つ一つ考え込んでたら疲れちまうよ。さっきのことは思い出の一つにすればいい」
「じゃあ、この指輪のことは……」
「うーん……。ラッキーなんじゃないか? 旅に危険は付き物だし、身を守る力ならあっても損じゃないだろ」
そう言って微笑むアレンを見ていると、アテナもつられて笑い出す。
「楽観的なのね。旅をするにはそれくらいじゃないとダメなのかしら?」
「そうさ! ……。それじゃ、とりあえずどんな旅になるかわからないけど、これからよろしくな!」
「えっ?」
アレンが手を差し出すと、アテナはきょとんとしてその手を見つめた。
「握手さ。知ってるだろ?」
「城では握手なんてしたことなかった……。うん、よろしく!」
二人は固く握手を交わした。微笑むアテナの顔を見て、アレンは尋ねた。
「もう、辛くはないか?」
「大丈夫、あなたがいるから……。頼りにしてるって意味よ」
アレンは、周りの空気の温度が何倍にも高くなったように感じた。握った手が焼けるようだ。
そして、二人は大地に足を踏み出した。それが世界すら巻き込む壮大な運命の序曲だということも知らず、多大な苦難を背負う第一歩だということも知らず……。
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