閑話 決戦前夜の想い

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 がっしりとした体躯の屈強な船乗り達や、派手に着飾った女性が闊歩する、世界最大の貿易都市パラミアフリート。膨大な数の商店が立ち並んでおり、その全てが絢爛たる装飾と看板を誇らしく掲げている。  飛空艇を一般人の目にさらすと騒ぎになるということで、アレン達は町から少し離れた場所に降り立った。 「へぇー、さすが世界最大の貿易都市って言うだけあるな。今までで一番人が多い」  挨拶代わりというように、アレンが感嘆の声を上げた。 「まずはこの宝石を換金しないとな」 「あれじゃない? 換金してくれる所」  解りやすすぎる換金の文字が光る店をアテナが指差す。 「そのようだな。これだけの宝石なら相当な値になるはずだ」  うきうき気分でアレン達は換金所に入っていった。 「えぇ!?」  換金所内にアレンの声が響く。 「二千五百万クレジット(この世界の通貨単位)だって!? ……って、高いのか?」 「知らないで驚いたのか」  毎度のことながらヴァースの説明によれば、高級な車が五台は買える額らしい。ただ、アレンは車の価値もあまり解っていないのでいまいちの反応だった。普及率の低い車が五台と言えばそれはそれは驚異の金額なのだが。 「凄ぇぜ! これだけありゃあ、どんな宿のどんな部屋でも泊まれる!」  興奮した様子でクロノスが飛び跳ねるので、アレンはそちらのほうが高価さを実感できた。 「すみません、この町で一番の宿はどこですか?」  アテナが尋ねると、凄まじい宝石の数々に目を奪われていた換金所の係員が驚いて振り向いた。決まり悪そうにして、係員は一つの宿を勧めた。  アレン達は早速その宿に向かった。  
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