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一際大きく、輝く看板が目に付く宿『ギルド』にアレン達は入っていった。中に入るなり、漂うアルコールの香りがアレン達の鼻をつく。見ればそこは、船乗り達が集まる巨大な酒場だった。
「ちゃんと宿もあるぜ。ここがパラミアフリート一の宿なら別にいいだろ」
「よし、そうとなれば早速酒だ。一度飲んでみたかったんだ」
そわそわしながら歩き出そうとするアレンをアテナが制止する。
「ダメよアレン。お酒は二十歳になってから」
「カタイこと言うな。適度なアルコールの摂取は体にいいんだって」
「それは大人になってからの話でしょ! ってそんな話どこで聞いたのよ」
「このオッサンから」
アレンは既にテーブルにつき、その場にいた船乗り達と仲良くなっていた。隣りのヒゲオヤジと肩を組み、和気藹々(あいあい)と騒ぎ出している。
「もう溶け込んでやがる。……つーか俺も入れろぃ!」
クロノスも飛び跳ねながらテーブルに向かう。
「あっ、クロノス、待ちなさい!」
「ふふ、いいじゃないか。面白そうだ」
そう言ってヴァースまでもが近くの席に座る。
「もう、ヴァースさんまで。いいわよ、知らないから」
そう言うとアテナは不機嫌そうに別のテーブルに一人でつき、夕飯を頼んだ。
「おう兄ちゃん、いけるクチだな。一杯どうよ」
「遠慮なく頂く!」
アレンはジョッキいっぱいに注がれた酒を一気に飲み干した。その見事な飲みっぷりに盛り上がる船乗り達。
「どうだい、そこのあんたも」
「あっ、俺、もうもらった」
クロノスは既に両手にジョッキを持っており、そしてその中身をゴクゴクと豪快に飲み干した。宴会でもしているかのように、船乗り達が拍手喝采を浴びせる。
「ハハハ、若いってのはいいねぇ。ほら、そっちのカッコイイ兄ちゃんもグイッと!」
船乗りの一人がヴァースにジョッキを渡すので、彼女は目を細めた。
「兄ちゃん、ね。慣れてはいる」
ヴァースは表情をまったく変えず酒を飲んだ。彼女は二十歳を越えているのでアテナの刺すような視線を感じることは無いが、アレンとクロノスには意外と凄まじい眼(がん)を飛ばしている。
「クロノスには負けねぇぞぉう!」
「んだとコラァ! 俺だっててめぇなんかに!」
そして、アレンとクロノスの酒飲み対決が始まった。アレンは一杯で完全に酔ってしまったようだったが、クロノスもいい感じに酔っ払っている。
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