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「アレンもクロノスもまったく……。ヴァースさんも止めてくれればいいのに」
見るとヴァースはジョッキを渡す係りにまわっており、この上なく楽しそうである。アテナは一層肩を落とした。
「ダメだわこの人達……」
結局、クロノスがアレンにダブルスコアで圧勝。アテナがそんな二人に呆れて視線を自分のテーブルに戻すと、目の前にいつの間にかアレンが座っていたので驚いた。
「わっ、ビックリしたじゃない!」
「ほら、あれらものみにゃって(アテナも飲みなって)!」
赤い顔で呂律の回らないままに言うアレン。
「すっかり酔っちゃってるじゃない! ……いいわ、飲むわよ、飲んでやるわよ! こうなりゃヤケだわ」
「ん? おい、待ちな! その酒は……」
船乗りが言うより早く、アテナは一気に中身を流し込んだ。
「店で一番強い酒……」
途端にアテナの顔が赤く染まり、がっくりと首を曲げる。アレンは恐る恐る声を掛けた。
「あ、あれら(アテナ)、だいひょうぶか(大丈夫か)?」
「……アレン」
アテナがアレンの頬に両手を伸ばし、とろんと溶けるような目を向ける。普段と違う妖艶な表情にアレンはドキッとした。
「お酒はダメって言ったでしょ!」
「ぐはぁっ!」
しかしアテナはアレンの顔を引き寄せ、強烈な頭突きをお見舞いした。額から流血し、吹っ飛んでテーブルにぶつかる。続いて、アテナはクロノスを睨みつけた。彼は周囲の女性を集めてハーレム状態を作り出していたが、その射抜くような眼光に戦慄が走る。
「ま、待てアテナ、落ち着け!」
「あなたも未成年でしょうが!」
クロノスのついていたテーブルを拳で粉砕し、回し蹴りでクロノスを蹴り飛ばすと、彼はプリマのようにクルクル回転しながら吹っ飛び壁に激突した。そして、怒りの矛先は終にヴァースに向いた。これにはヴァースも流石に焦る。
「ヴァースさぁん、どうして止めてくれなかったのかしらぁ?」
アテナは目が虚ろだった。ますます怖い。
「いや、私はただ楽しいことになるかと、決戦前の息抜きに……」
「なるかぁ!」
アテナが拳を振り上げたので、ヴァースは思わず目を閉じた。しかし、アテナは突然その場に座り込み、今度は悲しそうにぶつぶつと何かを呟き出した。
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