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「私は、私はいつも真面目にやってるわ。なのに、どうしてあなた達はいつも……。う、ううぅ……」
「怒ったと思ったら、今度は泣き出したぞ」
すっかり酔いの醒めたアレンが頭をさすりながら言うと、幸いにも助かったヴァースが冷や汗をぬぐった。
「感情の起伏が激しくなっている」
「放っとくとマズいんじゃ……」
しばらくさめざめと愚痴をこぼし続けた後、唐突にアテナはパッと顔を上げた。
「そうよ! 私だってもう真面目になんかしなければいいんだわ!」
「今度は開き直った!」
「重症だな」
ヴァースが目を閉じて首を横に振る。
「諦めるなぁ! 心術で何とかしてくれー!」
「それにしてもこの部屋暑いわね」
アテナが顔の前で手をパタパタと振るが、もちろんこの部屋が暑い訳ではない。
「そりゃお前が熱くなってんだ!」
「なによ、私がいつ熱くなってたっていうのよ!」
アテナの殺意の眼差しを向けられると、アレンは蛇に睨まれた蛙のように硬直した。そして突然、彼女は服を脱ぎだした。
「わぁっ、何してんだ!」
アレンは慌てて両手で目を覆って叫んだが、彼女は恥じらいも無く上着を脱ぎ捨てた。
「暑いから服を脱いでるに決まってるじゃない! 悪い?」
「悪酔いだ!」
「おお、いいぞネェちゃん、もっと脱げー!」
船乗り達が歓声を上げる。クロノスとヴァースはもはや、自分に怒りの火の粉が振りかからないことを祈りつつ黙って見ていた。
「おいアテナ、いい加減に……」
「邪魔!」
「ぐふぁっ!」
アテナはせいけん突きで再びアレンを吹っ飛ばした。
「……これはもう止まらんな」
「冷静に言ってる場合か!」
鼻から血を流しながら救いを求める目でヴァースに手を伸ばすアレンだったが、彼女も命は惜しいので顔を背けた。
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