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「すみません、その看板がある屋上に案内してもらえませんか?」
勇二は穏やかな口調でしかし顔は真剣のまま責任者に言った。
「あっはい!案内致します。」
「さっ行きますよ。」
そう言うと勇二は悟の手を引っ張った。
「え…おい。」
悟は勇二の手を振りほどこうとした。
その行動に勇二は真剣で鋭い目を更に鋭くして言った。
「いい加減にして下さい。言っときますが今のあなたに拒否権などありません。…黙って連いてこい!」
真剣で鋭い目、優しい時とは違う低い声、今までの態度と明らかに違う勇二に悟は恐怖を覚えた。
「…わかった」
悟はうつ向きながら答えた。
勇二はいつもの優しい顔に戻り悟の手を引っ張った。
「…手話せよ俺逃げ出さないし。」
悟は自分が危険な目に合わせないように手を握っているのは十分わかる。
でも少し恥ずかしい気持ちがあった。
「あの屋上行かないんですか?」
「あっすみません!さぁ行きましょう。」
責任者の言葉に勇二は手を握ったまま歩き出した。
(こいつの手、意外にでかいな。)
悟はそんな事を考えながら歩いていた。
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