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しばらく泣き続ける悟を勇二はずっと抱き締めたままでいた。
そして悟の泣き声が落ち着いた頃、勇二は静かに抱き締める手を離した。
「ごめんな勇二さん。」
「いえ…だからさっき悟さんはあんなに怒ってたんですね。」
「うん、あれから俺、無差別とかそんな理由の事件聞くと感情が抑えられなくなって…」
悟の悲しい過去を聞いた勇二は意を決したように口を開いた。
「実は俺も悟さんと同じ気持ちなんですよ。」
「え?」
顔は笑ったままだが、どこか悲しい目で言う勇二に悟が首を傾げた。
「…俺は悟さんと同い年になる弟がいたんです。」
勇二の告白に、悟は驚愕したような顔で勇二を見つめた。
「アイツも我が儘で意地っ張りで…失礼ですが悟さんによく似た弟でした。」
「……」
「でもアイツは5年前に誘拐され…散々暴力を受け続け…殺されました。」
勇二は怒りと憎しみでいつもと優しい目とかなり違っていた。
「そして後に犯人はストレス解消とかふざけた理由で犯行に及んだのがわかりました。」
この時勇二はいつの間にか涙を流していた。
そんな勇二を今度は悟が抱き締めた。
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