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風が、髪を揺らしてた。
朝、通学路の土手を、亮は一人自転車を走らせていた。
タイヤが石を踏む度に籠の中でリュックが跳ねる。
さっき跳ねた時に耳のイヤホンがずれたため、片手で操作しながら直す。
今日は遅刻気味だから、いつもよりスピードをだしてペダルを踏まなければならない。
高校の裏側に面する土手はいつもの時間なら沢山の生徒がいるが、今の時間帯はあまりいない。
静かな土手を無言で走らせながら、目の前にいる女子生徒を抜こうと横を通る。
すると―ガシャン!!
何事かと慌てて振り返ると、抜かしたはずの女子生徒が自転車ごと転んでいる。(ハァ!?何コケてんだよ!!)
と内心愚痴りながら自転車を止め、スタンドを立てて近寄る。
「おい、大丈夫か?」
手をさしのべてやると、女子生徒は顔をしかめながらも亮を見た。
赤い指定のリボン。亮の学年色であるネクタイも赤いから、彼女も一年だ。
「あ、ありがとう…」手に捕まりながら立ち上がると、彼女の膝や手は赤くすりきれ、見るからに痛々しい。(うわ…俺のせいかな?)
彼女を立たせておいて、亮は彼女の散らばった鞄の中身を拾う。
「あ、いいよいいよっ!!」
と慌てたように彼女は手伝おうと屈むが、
「いたぁッ!!」
と膝をおさえる。
「いいから、先にチャリ立てて。一緒に保健室行くよ」
拾い終わった荷物を鞄に適当にしまい、ハイと手渡す。
「いいよ、一人で行けるから」
「どっちにしろ今の時間じゃ遅刻決定。保健室行ってましたっていったら免れるじゃん?」
とおどけて見せたら、彼女ははにかむように小さく笑った。
彼女は膝を少し引きずり、俺は横を歩く。
土手に、少しだけ暖かくなった風が駆け抜け、二人の髪を揺らした。
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