一年、三月

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    本当の出会いは、まだ先   <―これで、私からの話は終わりです> マイクで拡張された校長の退屈な話がやっと終わる。 普段の集会と終業式や始業式の違う部分は、多分校長の話の時に座らせてくれないこと。 校長がステージから降りるまえからフロアの生徒はざわめき始めてる。 「あ~長いッ!!」 泰介がグッと背筋を伸ばしながら小さく愚痴るのが聞こえて亮は思わず笑った。 校長の話が終われば後は春休みの過ごしかたとか誰も聞かないような話が続き、漸く式が解散となる。 既に三年生が卒業しているので、退場は何時もよりスムーズに進む。 その時、亮の視界に、あの時の女子生徒が見えた。 ほんの一瞬だけれども、見間違えはない。 足が止まった亮を不思議に思った伸也が声をかけてくる。 「…亮?」 「あ、何でもない…」 急いで返事して、彼女がいたほうを向くが、既に彼女はいなかった。     「泰介は春休みなにする??」 駐輪場で亮は泰介に問いかけた。 「そりゃぁモチロン部活!!」 泰介は拳を作って即答する。 「伸也は??」 「バイトかな。そういう亮はどうなんだ?」 「ん~、多分部活と勉強と…やっぱ遊びに行く??」 「だよな!!じゃあ進級祝いをかねて今からカラオケ行こうぜ!!」 カード持ってるし、と泰介は嬉しそうに二人に聞く。 「…泰介、部活は??」 泰介は野球部なので、休みがあまりないはずだ。 「今日は無し!!」 「俺はいいけど、伸也はどう?」 「今日はフリー」 「うしっ、じゃあ行くぜ!!」     春休みはまだ始まっていない。
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