二年、四月

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  何だか新鮮で、違う世界。   浅木陽(あきら)と彼女は名乗った。 始業式を待つ間、亮は陽と話した。 一方的に陽が話した、と言った方が実際は近かった。 「あの時東君さっさと行っちゃうから誰だか分からなくて」 楽しげに陽は笑う。 「私も遅刻しかけてたし丁度よかったの」 また笑う。 一度会っただけなのに、何故笑う。 そして陽は1年の話も少しした。 「私去年は進学コースだったんだけど、ついてけなくてコース変えたんだ」 今度は苦笑い。 だけどすぐ笑う。   初めて入る教室。 次第に増える新しいクラスのメンバー。 俺の名を呼ぶ泰介の声。 少しだけ開いた、薄汚れた教室の窓。 何もない教室の壁。 綺麗な黒板。 先輩の残した落書き。 目の前の陽の笑顔。 何だか色々新鮮で違う世界に見えた。   教師が呼びにくるまで、亮はその不思議な感覚に浸った。
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