第6話

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その頃比菜は…。 アタシは山瀬が忘れたチケットを渡しに、エレベーターを降りる。 オートロックの自動ドア近くまで来たところで山瀬の後ろ姿が見えた。 比(いたいた♪) 山瀬の他にも誰かいるようだ。 比(誰だ?) アタシはずっと後ろから山瀬の肩越しに、その「誰か」を見た。 その「誰か」は、実乃だった。 比(何してんだろ) 何を話してるかは聞こえない。 その時、 実乃が山瀬に抱きついた。 ━━━━━━━━━━━━━━━ 実「山瀬、わたし……」 わたしは山瀬に抱きついていた。 実「わたし…、山瀬のこと好きだから……。別に付き合ってとかいうわけじゃなくて、ただ言っておきたかっただけ」 わたしは山瀬の顔も見ずに今来た道を走りだしていた。 実(何言ってんのわたし…。) こんなこと言うはずじゃなかった………。 ━━━━━━━━━━━━━━━ 比(な、何が起こったの!?) なぜだか冷や汗が止まらない。 山瀬がこっちを振り向こうとする。 アタシは見つかる前に、柱の影に隠れた。 ドキドキしている。 何なの……。 何で実乃は山瀬に抱きついたの…………。 頭がパニックになって訳がわからなかった。 ただひとつ、アタシの心に、ヒビが入っていく音だけが聞こえていた。
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